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入管問題とは何か

終わらない〈密室の人権侵害〉

著者:鈴木江理子/編著 児玉晃一/編著
価格:2,400円+税
刊行日:2022/08/31 [ calendar_today Google ] [ calendar_today Yahoo! ]
出版社:明石書店
ISBN:978-4-7503-5448-4
Cコード:0036
[単行本](社会)


内容紹介

日本には、正規の滞在が認められない外国人を収容する入管収容施設がある。収容の可否に司法は関与せず、無期限収容も追放も可能な場所だ。差別と暴力が支配するこの施設は、私たちの社会の一部である。「不法な外国人」に対する眼差しにも迫る、果敢な試み。

まえがき

はじめに

 日本には、正規の滞在が認められない外国人を収容するための施設――入管収容施設がある。収容の可否判断に司法は関与せず、入管職員の裁量によって、無期限の収容が可能である。二〇二一年末現在、全国一七カ所の入管収容施設に収容されている外国人は一二四名であるが、新型コロナウイルス感染症対策として仮放免(一時的な解放)が積極的に活用される前の被収容者数は一〇五四名(二〇一九年末)であった。
 当局からは、早期の出国を求められているものの、「帰れない事情」を抱えたまま、何年間も自由を奪われ、人間としての尊厳までも奪われ、狭い空間に収容され続けている外国人もいる。
 多くの日本人にとっては無縁の入管収容施設では、以前から、暴行事件や死亡事件、自殺未遂事件が発生していたが、「密室」ゆえにその全容が解明されることはなかった。被害者が「外国人」であり、「日本にいるべきではない不法な人間」であるゆえに、メディアや市民の関心も低かったのかもしれない。関係者や監督者の責任が追及されることなく、やり過ごされていくことが常であった。
 そのような状況を変えるきっかけとなったのが、二〇二一年三月、名古屋にある入管収容施設で発生したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件である。当初、彼女は、これまでの被害者と同様、匿名で「スリランカ人女性」とのみ報道されていた。「広く報じてもらい真相解明や再発防止につなげてほしい」――記者会見した遺族の希望を受けて、写真とともに実名で報じられるようになったことが、三三歳で人生を終えなければならなかった彼女に対する想像力や共感を呼び起こしたともいえよう。ウィシュマさんが抱いていた日本での夢、在留資格を失った経緯、収容されていた彼女と面会していた支援者が語る言葉などが、メディアを通じて伝えられることによって、国家が管理する施設で、かけがえのない「一人の人間」の命が奪われた事実に、怒りを抱いた市民は少なくないはずだ。
 折しも「好ましからざる不法な外国人」の送還促進を可能とする出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)の改定法案の審議入り直前であったこともあり、いつも通り不都合な真実を隠蔽して切り抜けようとした当局に対して、市民社会が声をあげたのである。
 結果、第二〇四回通常国会に上程されていた改定法案は廃案になったものの、いまだ彼女の死の真相は解明されていないし、いわんや、これまで入管収容施設で発生した数多の事件の真実は不明のままである。明らかになったのは、入管収容施設がもつ「暴力性」という特質である。
 二〇二一年一一月、妹のワヨミさんとポールニマさんが、ウィシュマさんを「見殺し」にしたことに対して、当時の名古屋入国管理局長らを刑事告訴したが、翌二〇二二年六月、名古屋地方検察庁は、嫌疑なしで不起訴処分とした。入管側がウィシュマさんに対して適切な医療を怠ったとは認められないというのが、その理由である。
 二〇二二年三月には、母親と妹二人が、彼女の死に対する国家賠償を求め名古屋地方裁判所に提訴した。国家権力に阿ることなく、「暴力性」の隠蔽に加担することなく、司法の正義が貫かれることを期待する。

 本書は、多様な立場で「暴力性」に対抗しようとする執筆者の論考やコラムから成り立っている。

 (…後略…)

もくじ

 はじめに[鈴木江理子]

第1章 入管収容施設とは何か――「追放」のための暴力装置[鈴木江理子]
 1 追いつめられる被収容者
 2 追いつめられる仮放免者
 3 追いつめられる外国人
 Column 1 ウィシュマさん国家賠償請求事件[空野佳弘]

第2章 いつ、誰によって入管はできたのか――体制の成立をめぐって[朴沙羅]
 1 はじめに
 2 敗戦と非正規な人と物資の移動――引揚げと「密航」・「密貿易」
 3 外国人登録令の公布とエスニック・マイノリティの外国人化
 4 冷戦と民族差別――入管体制の成立
 5 「入管体制」への疑問
 6 おわりに
 Column 2 大村入国者収容所における朝鮮人の収容[挽地康彦]

第3章 入管で何が起きてきたのか――密室を暴く市民活動[高橋徹]
 1 はじめに
 2 入管収容問題と出会う
 3 入管問題調査会の発足
 4 被収容者の母国をたずねる
 5 信じがたい蛮行の数々
 6 強制収容される子どもたち
 7 解決への糸口
 8 おわりに
 Column 3 入管収容で奪われた「もの」[井上晴子]

第4章 支援者としていかに向き合ってきたか――始まりは偶然から[周香織]
 1 難民問題との出会い
 2 クルド人難民家族とイラン人難民との出会い
 3 クルド人難民Mさんとその家族
 4 深刻化する入管の長期収容問題と「入管法改正案」
 Column 4 弱くしなやかなつながりのなかで[安藤真起子]

第5章 誰がどのように苦しんでいるのか――人間像をめぐって[木村友祐]
 1 晴佳さんとサイさん、その子どもたち
 2 トルコ国籍のクルド人チェリクさん
 Column 5 被収容者の経験[アフシン]

第6章 どうすれば現状を変えられるのか――司法によるアプローチを中心に[児玉晃一]
 1 収容制度について
 2 「収容に代わる監理措置」
 3 収容施設及び処遇
 4 仮放免中の処遇
 5 改善へのアプローチ

 あとがきにかえて[児玉晃一]
 入管収容をめぐる年表

鈴木 江理子

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国士舘大学文学部教授。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)共同代表理事、認定NPO法人多文化共生センター東京理事等を兼任。移民政策や人口政策、労働政策を研究するかたわら、外国人支援の現場でも活動。主著に『日本で働く非正規滞在者――彼らは「好ましくない外国人労働者」なのか?』(明石書店、平成21年度冲永賞)、『非正規滞在者と在留特別許可――移住者たちの過去・現在・未来』(共編著、日本評論社)、『東日本大震災と外国人移住者たち』(編著、明石書店)、『新版 外国人労働者受け入れを問う』(共著、岩波書店)、『アンダーコロナの移民たち――日本社会の脆弱性があらわれた場所』(編著、明石書店)など。

児玉 晃一

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弁護士。全件収容主義と闘う弁護士の会「ハマースミスの誓い」代表。入管問題調査会代表。移民政策学会常任理事。元日本弁護士連合会理事。東京弁護士会外国人の権利に関する委員会委員長、関東弁護士会連合会外国人の人権救済委員会委員長を歴任。主著に『難民判例集』『コンメンタール出入国管理及び難民認定法2012』(編著、現代人文社)、『外国人刑事弁護マニュアル」(共著、現代人文社)。論文に「『全件収容主義』は誤りである」(大橋毅弁護士と共著。『移民政策研究』創刊号)、「恣意的拘禁と入管収容」(『法学セミナー』2020年2月号)など。2021年4月21日には、衆議院法務委員会に参考人として出席し、入管法改定案反対の立場から意見を述べた。その他の経緯について詳しくは「あとがきにかえて」を参照。

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