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芦生原生林今昔物語

京都大学芦生演習林から研究林へ

著者:渡辺弘之/著
価格:2,200円+税
刊行日:2021/11/01

出版社:あっぷる出版社
ISBN:978-4-87177-359-1
Cコード:0045
[単行本](生物学)

京都、由良川最源流域に残された芦生(あしう)の森。この貴重な原生林がどのようにして守られてきたのか。同地で研究生活をスタートさせた森林生態学者による、森から人間へのメッセージ。


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内容紹介

京都、由良川最源流域に残された芦生(あしう)の森。この貴重な原生林がどのようにして守られてきたのか。同地で研究生活をスタートさせた生態学者が伝える、森から人間へのメッセージ。

まえがき

私が初めて芦生へ入ったのは大学院に入学してすぐ、昭和36(1961)年5月の連休のこと、当時4回生だった中島義昌さんたちとであった。京都駅から国鉄バスで美山町安掛へ、京都交通バスに乗り換えて終点田歌へ、田歌からは須後の演習林宿舎まで歩いた。学生宿舎は夕食時の6時から9時まで自家発電の電灯がついたが、9時に合図があり、消灯、あとは石油ランプであった。廊下にたくさんの石油ランプがぶらがっていた。この自家発電は昭和26(1950)年にはじまり、芦生の集落との共同経営だったようだ。演習林では消灯は9時だったように記憶しているが、芦生集落では10時だったと聞く。実習の学生を早く寝させるためだったのだろうか。ともかく、最奥の集落にも夕方だけだが電灯が灯っていた。
次の日は須後から内杉谷を遡り、幽仙谷からケヤキ峠近くの尾根へあがった。内杉谷林道はヒツクラ谷との合流点落合橋あたりまで開設されていたようだが、もちろん、学生に車を出してはくれない。やっと尾根に上がると、保存木に指定されていた大きな連理のミズナラがあった。下谷の最上流のオホノ谷、ノリコの滝の横を下って下谷の谷底をあっちこっちと何度も丸木橋を渡り、本流(上谷)との出合である中山で、対岸の左岸へ渡り、雪のまだ残っていたドイツトウヒ林を抜け、丸木橋を渡ると背の高いススキの向こうに銅版屋根の建物、長治谷小屋がようやく見えてくる。たっぷり一日の行程であった。今では林道が開通し、ほぼ1時間で行けるが、まったく林道のない時代のこと、須後から長治谷まで16㎞の旧歩道を歩いた経験をもつ人はもう少ない。

もくじ

Ⅰ 秘境芦生(あしう)
1 由良川源流 
2源流の山と渓谷 
3原生林 
4演習林の設置 
5森林軌道・トロッコ道 

Ⅱ 芦生での暮らし・村の行事
(1)芦生での生活 
1芦生に赴任 
2ご馳走は廃鶏 
3宿舎の断水 
4芦生分校 
5夜川と夜づけ(つけ針) 
6交流 
7雪 
(2)芦生案内 
1松上げ 
2芦生熊野権現神社のワサビ祭り 
3芦生神社と中山神社 
4廃村灰野 
5地蔵峠と一石一字塔 
6野田畑の木地師居住地

Ⅲ 長治谷
1須後(芦生)から長治谷へ歩く 
2長治谷小屋 
3雪下し 
4今も気になっている私の判断 
5キノコの宝庫 
6救助を求める 

Ⅳ 学生実習
1樹木・造林実習 
2生玉子 
3女子学生の登場 

Ⅴ 自然の宝庫
1哺乳類(けもの) 
2 猟銃が与えられる 
3芦生の鳥類 
4カミキリムシ 
5豊富な植物相 
6芦生を基産地とする動植物 
7未解決で残ったこと 
8嫌われるムシ 
9食べられる山の木の実 

Ⅵ ツキノワグマ研究
1はじめてクマに会う 
2クマハギ(熊剥ぎ) 
3加害時期 
4国際クマ学会でクマハギを講演 
5被害防止 
6クマ捕獲 
7食べもの 
8円座 
9クマに発信器を着ける
10冬ごもり・越冬穴 
11クマの写真を撮る 

Ⅶ 土壌動物研究
1森林の土壌動物 
2各地の森林で土掘り 
3芦生での土壌動物研究 
4ミミズ研究 
5ミミズの糞塊生成量・土壌耕耘量 
6種類の解明 

Ⅷ 芦生今昔・将来
1景観の変化 
2楽しかった下谷 
3芦生ダム建設問題の発生 
4ダム計画の進展 
5蟷螂の斧 
6原生林は残った 
7評価高まる芦生原生林
8芦生集落と原生林の共存共栄

渡辺弘之

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1939年生まれ。農学博士。京都大学名誉教授。 高知大学農学部卒。京都大学大学院農学研究科林学専攻修士課程、同博士課程修了。1966年、京都大学助手として芦生演習林に赴任。6年間勤務。1999年から2年間、京都大学付属演習林長を務める。熱帯農学専攻、森林科学専攻を経て、2002年退職。その後も演習林から森林ステーション芦生研究林となった同地に通い続け、関わりは50年に及ぶ。 日本土壌動物学会会長、日本環境動物昆虫学会会長、関西自然保護機構理事長、日本林学会評議員・関西支部長、国際アグロフォレストリー研究センター(ナイロビ)理事などを歴任。現在、社叢学会 副理事長、滋賀県生きもの総合調査・その他陸生無脊椎動物部会長、ミミズ研究談話会会長、岡崎嘉平太国際奨学財団評議員、NPO法人自然と緑自然大学学長、日本土壌動物学会名誉会員。 著書に、「京都の秘境・芦生」「由良川源流芦生原生林生物誌」「神仏の森は消えるのか」(ナカニシヤ出版)、「登山者のための生態学」「アニマル・トラッキング」(山と渓谷社)、「森の動物学」(講談社)、「ツキノワグマの話」(NHK出版)、「クマ 生き生き動物の国」(誠文堂新光社)、「アジア動物誌」(めこん)、「樹木がはぐくんだ食文化」(研成社)、「琵琶湖ハッタミミズ物語」(サンライズ出版)、「熱帯林の恵み」(京都大学学術出版会)、「カイガラムシが熱帯林を救う」(東海大学出版会)、「東南アジア樹木紀行」(昭和堂)、「東南アジア林産物20の謎」「土の中の奇妙な生きもの」(築地書館)、「アグロフォレストリーハンドブック」(国際農林業協力協会)、「果物の王様ドリアンの植物誌」(長崎出版)、「熱帯の森から 森林研究フィールドノート」(あっぷる出版社)など多数。共著に、「土の中の小さな生き物ハンドブック」「落ち葉の下の小さな生き物ハンドブック」(文一総合出版)、「熱帯農学」(朝倉書店)。訳書に、「ミミズと土(チャールズ・ダーウィン)」「熱帯多雨林の植物誌(W・ヴィーヴァーズ・カーター)」(平凡社)などがある。

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